初めての研修で失敗を防ぐ5つのポイント

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初めての研修で失敗を防ぐ5つのポイント

 

初めて研修を担当することになったとき、多くの人がまず考えるのは「何を話すか」ではないでしょうか。

 

伝えたい内容を整理し、スライドを作り、当日の説明を練習する。もちろん、これらは研修の準備に欠かせません。しかし、研修の成否は、講師がどれだけ多くの情報を伝えられたかだけで決まるものではありません。

 

受講者が研修の目的を理解し、内容を自分の業務と結び付け、研修後に行動へ移せるか。ここまで設計できて、初めて研修は「実施した」だけでなく、「役に立った」と評価されます。

 

一方で、初めての研修では、次のような不安が生じがちです。

 

– どの程度の内容を盛り込めばよいのかわからない
– 一方的に話すだけの時間になってしまいそう
– 受講者の反応が薄かった場合にどう対応すればよいかわからない
– 時間内に内容を終えられるか心配
– 研修後に、学んだことが実務で活用されるか不安

 

これらの不安は、講師の話し方だけで解決するものではありません。研修の前段階である企画、当日の進行、研修後のフォローまでを一つの流れとして捉えることが重要です。

 

本記事では、初めて研修を担当する人に向けて、準備から実施、振り返りまでに意識したい5つのポイントを解説します。特別な演出や高度なテクニックではなく、研修の基本設計に関わる内容を中心に紹介します。

課題の整理

研修の準備では「伝えたいこと」が増えやすい

 

研修を任されると、講師は受講者に知ってほしい情報をたくさん持っています。自分の経験、関連する知識、現場で役立つ注意点などを盛り込みたくなるのは自然なことです。

 

しかし、伝えたい内容をそのまま並べると、研修全体の焦点がぼやける可能性があります。

 

たとえば、「新任者向けの業務研修」を実施するとします。この場合、業務の知識を網羅的に説明することが目的になりがちです。しかし、受講者が研修後に求められているのが「基本的な業務の流れを説明できること」なのか、「決められた手順で作業できること」なのか、「判断に迷ったときに相談できること」なのかによって、必要な内容や演習は変わります。

 

つまり、研修で扱う内容は、講師が話したいことではなく、受講者に身につけてほしいことから逆算する必要があります。

 

受講者は同じ知識や経験を持っているとは限らない

同じ研修に参加する受講者でも、経験や前提知識には差があります。

 

ある人にとっては簡単な内容でも、別の人には初めて聞く内容かもしれません。反対に、基礎的な説明が長く続くと、経験のある受講者は「すでに知っている」と感じることもあります。

 

この差を考慮せずに進めると、次のような状態が起こります。

 

– 一部の受講者だけが内容を理解している
– 質問したい人がいても、周囲を気にして発言できない
– 受講者の理解度にばらつきがあるまま次の内容へ進む
– 講師は説明したつもりでも、受講者の認識がそろっていない

 

研修では、受講者の反応を見ながら進行を調整する必要があります。そのためには、最初から「すべてを説明し切る」計画にするのではなく、理解を確認する場面を設けておくことが大切です。

 

研修当日の問題は、事前準備で軽減できる

研修中に起こる問題には、さまざまなものがあります。

 

– 予定より説明が長引く
– 質問に答えているうちに時間がなくなる
– 演習の目的が伝わらず、作業だけが進む
– 受講者同士の会話が広がらない
– 使用する資料や機器に不具合が起こる

 

これらは、当日の対応力だけで解決しようとすると、講師への負担が大きくなります。研修の目的、時間配分、演習の指示、確認方法などを事前に整理しておけば、予期しない状況にも対応しやすくなります。

 

初めての研修では、「うまく話すこと」よりも「迷いにくい進行を設計すること」が重要です。

 

 

解決方法

ポイント1:研修のゴールを「受講者の行動」で設定する

最初に行うべきことは、研修のゴールを明確にすることです。

 

このとき、「知識を理解する」「必要な情報を学ぶ」といった表現だけでは、研修後の状態を具体的にイメージしにくい場合があります。可能であれば、受講者が研修後に何をできるようになるのかを、行動で表しましょう。

 

たとえば、次のように整理できます。

– 「製品知識を身につける」
→「顧客から基本的な質問を受けたとき、要点を整理して説明できる」

– 「業務手順を理解する」
→「定められた手順に沿って、基本的な作業を一人で進められる」

– 「コミュニケーションを学ぶ」
→「相手の話を確認しながら、次の対応を提案できる」

– 「コンプライアンスを学ぶ」
→「判断に迷う場面で、確認すべき相手や手順を選べる」

 

行動で表現すると、研修で扱う内容を選びやすくなります。反対に、ゴールに直接つながらない情報は、補足資料に回す、別の機会に扱う、今回は扱わないといった判断ができます。

 

ゴールを設定するときの確認項目

研修の設計段階で、次の項目を確認してみましょう。

 

1. 研修の対象者は誰か
2. 受講者は研修前に何を知っているか
3. 研修後に、何ができるようになってほしいか
4. その行動は、どのような場面で必要になるか
5. できるようになったかを、どのように確認するか

 

「誰に、何を、どの場面で、どの程度できるようになってほしいのか」を整理できれば、研修の軸が定まります。

 

ポイント2:内容を詰め込みすぎず、優先順位を付ける

 

初めての研修では、時間内にできるだけ多くの内容を盛り込みたくなります。しかし、情報量が多いことと、学習効果が高いことは同じではありません。

 

内容を考えるときは、まず次の3つに分類すると整理しやすくなります。

 

研修中に必ず扱う内容

研修のゴールに直接関係し、受講者全員が押さえる必要がある内容です。基本概念、重要な手順、判断基準などが該当します。

 

演習や対話で確認する内容

説明を聞くだけでは、実際に使えるかどうか判断しにくい内容です。ケースへの対応、手順の実践、意見交換などを通じて確認します。

 

補足資料に回す内容

重要ではあるものの、研修当日に詳しく説明しなくてもよい内容です。細かな定義、参考情報、関連資料などは、補足資料や研修後の案内にまとめる方法があります。

研修時間には限りがあります。すべてを詳しく扱おうとせず、「今回の研修で必ず持ち帰ってほしいこと」を絞り込みましょう。

 

時間配分は説明だけで考えない

時間配分を作る際には、講師が話す時間だけでなく、受講者が考えたり、作業したりする時間も含めます。

 

たとえば、次のような構成が考えられます。

– 導入:目的、進め方、参加者の前提を確認する
– 説明:必要な知識や考え方を整理する
– 演習:学んだ内容を使って考える
– 共有:考え方や結果を確認する
– 振り返り:実務での活用方法を整理する

 

演習を入れる場合は、説明を短くする必要があるかもしれません。反対に、説明が多く必要なテーマでは、演習の数を絞る判断も必要です。

 

ポイント3:受講者が参加する場面を意図的に設ける

 

研修は、講師が話し続ける場ではありません。受講者が考え、発言し、手を動かす場面を設けることで、内容を自分の課題として捉えやすくなります。

 

参加型の進行といっても、必ずしも大がかりなグループワークが必要なわけではありません。次のような方法から、目的や時間に合うものを選べます。

 

– 近くの人と短時間で意見を交換する
– 質問への回答を個人でメモする
– 複数の選択肢から判断を選ぶ
– ケースを読んで、対応の理由を考える
– 研修内容を自分の業務に置き換えて書く
– 講師の問いに対して、挙手やチャットで反応する

 

重要なのは、活動を入れること自体ではなく、活動の目的を明確にすることです。

 

演習の指示は具体的にする

「自由に話し合ってください」だけでは、受講者が何をどの程度話せばよいのかわからない可能性があります。

 

演習を行うときは、少なくとも次の点を示しましょう。

– 何について考えるのか
– 個人で考えるのか、グループで話すのか
– 何分で行うのか
– どのような形で共有するのか
– 正解を求めるのか、考え方を確認するのか

 

たとえば、「事例を読んで対応を考えてください」ではなく、「事例を読んだうえで、最初に取る行動を一つ選び、その理由を2点以内で整理してください。個人で3分考えた後、2人で意見を共有します」と伝えると、受講者は取り組みやすくなります。

 

発言しやすい環境をつくる

受講者が発言しないからといって、必ずしも関心がないとは限りません。内容が難しい、間違いを避けたい、考える時間が足りないなど、さまざまな理由が考えられます。

 

いきなり全体へ質問するのではなく、まず個人で考える時間を置く、隣の人と共有する、選択式で確認するなど、発言へのハードルを下げる工夫が有効です。

 

また、発言に対しては、正誤だけで終わらせず、「そのように考えた理由」を確認しましょう。講師が受講者の考え方を受け止めたうえで整理すると、対話が続きやすくなります。

 

ポイント4:理解度を途中で確認する

研修の最後にアンケートを実施するだけでは、研修中に受講者がどこまで理解していたかを把握できません。途中で理解度を確認する場面を設けましょう。

確認方法は、テスト形式に限りません。たとえば、次のような方法があります。

 

– ここまでの要点を受講者に一言でまとめてもらう
– 重要なポイントを選択肢から選んでもらう
– 具体的なケースに当てはめて判断してもらう
– 「わかったこと」「まだ不明なこと」を書いてもらう
– 質問を集めて、共通する疑問を整理する

 

講師が「質問はありますか」と尋ねるだけでは、質問が出ないこともあります。そこで、「ここまでで迷いやすいと感じた点はどこですか」「実務で使うとしたら、どの場面が難しそうですか」といった聞き方に変えると、受講者が疑問を具体化しやすくなります。

 

理解度の確認は講師のためにもなる

理解度の確認は、受講者を評価するためだけのものではありません。講師が進行を調整するためにも役立ちます。

 

多くの受講者が理解できていない場合は、別の例を使って説明し直す必要があります。反対に、すでに十分理解されている内容であれば、説明を短くして演習に時間を回すこともできます。

 

研修は、事前に作った台本を最後まで読み上げるものではありません。受講者の状態を見ながら、目的に向けて進めるものです。

 

ポイント5:研修後の行動まで設計する

研修の終了は、学習の終了とは限りません。受講者が学んだ内容を実務で使うためには、研修後に何をするのかを明確にする必要があります。

 

研修の最後には、次のような項目を整理しましょう。

 

– 今日の研修で重要だったこと
– 自分の業務で活用できそうな場面
– まず試す具体的な行動
– 実行する時期
– 実行にあたって確認したいこと
– 必要に応じて相談する相手

 

「今後、業務に活かしましょう」というまとめ方では、行動が抽象的になりやすい傾向があります。代わりに、「明日から何をするか」「最初にどの場面で試すか」まで書き出してもらうと、研修内容を実務へ移しやすくなります。

フォロー方法も事前に決める

研修後のフォローには、さまざまな方法があります。

 

– 研修資料や参考資料を共有する
– 一定期間後に実践状況を確認する
– 上司や担当者に行動目標を共有する
– 実務で困った事例を持ち寄る
– 短時間の振り返りを行う
– 質問を受け付ける窓口を案内する

 

すべてを実施する必要はありません。研修の目的や組織の状況に応じて、無理なく続けられる方法を選びます。

 

また、研修後のフォローを設計すると、研修当日に何を確認すべきかも明確になります。たとえば、研修後に実践状況を確認するのであれば、研修中に行動目標を設定しておく必要があります。

 

まとめ

初めての研修で失敗しないためには、講師が上手に話すことだけを目指すのではなく、受講者の学びと行動を中心に研修を設計することが重要です。

 

今回紹介したポイントは、次の5つです。

1. 研修のゴールを、受講者の行動で設定する
2. 内容を詰め込みすぎず、優先順位を付ける
3. 受講者が参加する場面を意図的に設ける
4. 理解度を途中で確認する
5. 研修後の行動まで設計する

 

準備の段階では、まず「この研修が終わったとき、受講者に何ができるようになってほしいのか」を考えます。そのうえで、必要な説明、演習、確認、振り返りを組み合わせていきます。

 

当日の進行では、予定どおりに進めることだけにこだわらず、受講者の反応を確認しながら調整します。質問が出ない場合も、理解度や関心がないと決めつけず、考える時間や共有の方法を工夫しましょう。

 

そして、研修の最後には、学んだ内容を実務でどう使うのかを具体化します。研修は、知識を受け取る場で終わるのではなく、受講者が次の行動を決める場でもあります。

 

初めから完璧な研修を実施する必要はありません。研修後に、目的は伝わったか、時間配分は適切だったか、受講者が参加できていたか、実務につながる内容だったかを振り返り、次回の改善につなげることが大切です。

 

最初の一歩として、研修資料を作り始める前に、次の一文を完成させてみてください。

> この研修を受けた人が、研修後にできるようになることは、____である。

この一文が具体的になるほど、研修で扱うべき内容と、扱わなくてもよい内容が見えやすくなります。

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